お知らせ

弁護士に必要な知識2014.4.11

カテゴリー:お知らせ 

我々弁護士は、日々の業務で様々な相談を受け、基本的には法律上の観点からアドバイスを行うのですが、法律の知識のみでは何の解決にもならなかったり、様々な角度から、法律上のあるいは法律外の知識を動員して初めて、限られた時間内に相談者が納得できる答えを出せるということがよくあります。

先日の相談では、隣の工場が火元となった火災で延焼し、自分の工場内の設備が全焼したことから、隣の火元に補償を求めたのだが、工場が焼けてしまってお金もないと言われ困っているという方が来られました。                                              我が国には、失火責任法という古い法律があり、お隣の失火で延焼を受けたという場合、単にお隣に過失があったというだけでは損害賠償を請求することができず、お隣に「重過失」が必要とされています。 本件では、木材置場の横のドラム缶で廃材を燃やしていたことが出火原因とのことでしたので、お隣の「重過失」は何とか立証できるかもしれませんが、お隣に支払能力がなければ、結局請求しても支払を受けられないということになります。ここまでは、いわゆる「単発の法律知識」で回答できる範囲になるのでしょうが、それだけでは相談者の要求に十分に応えたことにはなりません。             さらに事情を聞いてみたところ、お隣には火事の後、保険会社の人が現場を見に来ていたとのことでしたので、何とかお隣が掛けていた火災保険金(おそらく家財・設備に関する保険)から回収できないかを検討することになりますが、火災保険の約款には通常、被保険者(ここではお隣)に重過失がある場合には免責される(保険金を支払わない)という条項があり、せっかく重過失を立証してお隣の責任が認められても、逆に「頼みの綱」の火災保険金が支払われないというジレンマに陥ってしまいます。      ただし、一般的に失火責任法上の「重過失」と火災保険の免責事由である「重過失」とは同じ用語でも範囲が異なり、後者の方が狭いと考えられていますので、ひとまず火災保険金請求権を仮差押えし、保険会社からの支払を止めたうえで、失火責任法上の重過失を主張してお隣に損害賠償請求すれば、回収は可能かもしれないというのが正しい回答になります。                         このような場合、単なる法律の知識だけでは適切な回答をすることはできず、保険の知識など、様々な知識を動員することが必要となります。

また、交通事故の場面でも、人身事故の加害者に資力がないだけでなく、自賠責保険にさえ入っていないというような場合、あきらめずに、何とか治療費や慰謝料相当額を回収できないか、手がかりを得るために十分な聴き取りを行う必要があります。                             まず、通勤時に事故にあったということであれば、一定の範囲で労災保険から支払を受けられますし、加害者が自賠責無保険である場合、政府保障事業により支払を受けられる場合があります。さらに、被害者自身や、同居の家族が車を保有し、任意保険にも入っている場合には、自分の保険の人身傷害補償特約により、事故により被害を受けた場合に治療費等の支払を受けられますので、ここまで聴き取りをして回収手段を考えて初めて、相談者の要求に応えたことになるのでしょう。

逆に、小学生の子どもが自転車を運転していて通行人のおばあさんに怪我をさせたとか、駐車中の自動車にぶつかって傷をつけたなど、加害者側から相談を受けた場合にも、保険の知識があれば、適切なアドバイスができる場合がよくあります。                                上記の例ですと、相談者であるお父さんが車を運転し、任意保険にも入っているのであれば、通常は個人賠償保険の特約も付いていますので、自動車事故で相手方に損害を与えた場合だけでなく(いわゆる対人や対物保険)、家族が日常生活上の行為で他人に損害を与えたような場合にも、保険が使えることになります。                                            また、最近ではクレジットカードにも、同じく個人賠償保険が付いていることが多いので、車を運転しないと言われてあきらめず、契約しているクレジットカードをすべて調べ、個人賠償保険を使えないか確認してみると、実際には使えることが多いのです。                         これらは、法律上の知識ではなく、一般常識とか保険の知識の範疇ですが、法律相談を受ける弁護士として、適切なアドバイスをするために欠かせない知識といえるでしょう。

事務所案内

〒650-0033
神戸市中央区江戸町98-1
東町・江戸町ビル2階
神戸きらめき法律事務所
FAX:078-326-0152

上へ戻る